有田焼辞典
有田焼の歴史や様式、技法、文様などを専門店の視点からわかりやすくご紹介します。
磁器と陶器の違いとは|特徴・見分け方・有田焼との関係
磁器と陶器のカップ。見た目だけでは分かりにくい違いも、原料や素地の色を見ると理解しやすくなります。
磁器と陶器は、どちらも「陶磁器」と呼ばれる焼き物ですが、原料や焼成温度、質感、吸水性、絵付けの表現に違いがあります。磁器には白く硬く、薄く軽く作りやすい特徴があり、陶器には土の温かみや素朴な風合いがあります。本ページでは、磁器と陶器の違いを、原料・特徴・見分け方・有田焼との関係から分かりやすく解説します。
磁器と陶器の違いとは
磁器と陶器の大きな違いは、主に原料と焼き上がりの性質にあります。磁器は陶石を主な原料とし、高温で焼き締めることで、白く硬い素地になります。一方、陶器は陶土と呼ばれる粘土質の土を主な原料とし、土の色や風合いが器の表情に現れやすい焼き物です。
そのため、磁器は白く清潔感のある印象を持ち、染付や赤絵、金彩などの絵付けを鮮やかに表現しやすい特徴があります。陶器は、土ものらしい温かみや素朴な質感が魅力です。
磁器と陶器の主な違い。原料、見た目、吸水性、硬さ、音、焼成温度などに違いがあります。
磁器の特徴
磁器は、硬く焼き締まった白い素地を持つ焼き物です。薄く作っても強度を保ちやすく、軽やかで繊細な器を作ることができます。日常の食器として扱いやすいだけでなく、白い素地を生かした多彩な絵付けにも向いています。
白く清潔感のある磁器の湯呑。
薄く作られた磁器では、光を通す性質が見られます。器の向こう側にある指の影がうっすら透けています。
薄く軽く作りやすい
磁器は高温で焼き締められるため、硬く丈夫な素地になります。そのため、器を薄く作っても強度を保ちやすく、軽く扱いやすい器を作ることができます。口当たりの繊細さや、手に持った時の軽やかさは、磁器ならではの魅力の一つです。
吸水しにくく衛生的
磁器は素地が緻密に焼き締まっているため、吸水しにくい性質があります。さらに食器として使われる多くの磁器には釉薬がかけられているため、水分や汚れが染み込みにくく、カビや臭いが付きにくいという利点があります。
多彩な絵付けを美しく表現できる
磁器の白い素地は、絵付けを美しく見せる土台になります。染付の藍色、上絵の赤、黄、緑、紫、金彩など、さまざまな色を鮮やかに表現しやすいことも、磁器の大きな特徴です。
有田焼に多彩な文様や様式が生まれた背景には、この白く美しい磁器の素地があります。古伊万里様式、柿右衛門様式、鍋島様式などの表現も、磁器の白い肌を生かすことで発展してきました。
陶器の特徴
陶器は、陶土と呼ばれる粘土質の土を主な原料とする焼き物です。磁器に比べると、土の色や質感が器の表情に現れやすく、温かみのある風合いを楽しむことができます。
陶器には、磁器では表現しにくい土の温かみや素朴な風合いがあります。
陶器には、磁器にはないやわらかな質感や、土ものならではの表情があります。釉薬の流れ方、土の粒子、焼き上がりの変化などが器ごとの個性となり、食卓に落ち着きや温かみを添えてくれます。
磁器と陶器は、どちらが優れているというものではありません。磁器には磁器の美しさがあり、陶器には陶器の魅力があります。食卓では両方を組み合わせることで、料理や季節に合わせた、より豊かな器使いを楽しむことができます。
表面が黒いから陶器とは限りません
磁器と陶器は、表面の色だけで判断することはできません。黒い釉薬がかかっている器でも、素地が白ければ磁器です。反対に、白っぽい釉薬がかかっていても、素地が土色であれば陶器である場合があります。
黒い釉薬がかかった磁器のカップ。表面の色だけでは、磁器か陶器かは判断できません。
高台裏を見ると白い素地が見え、この器が磁器であることが分かります。
一見するとどちらも黒っぽい器ですが、割れた断面を見ると違いが分かります。磁器の断面は白く、陶器の断面は茶色く見えます。
磁器と陶器を見分ける方法
磁器と陶器を見分ける時は、器の表面ではなく、釉薬がかかっていない部分を見ると分かりやすくなります。特に注目したいのが、器の底にある高台の裏側です。
高台裏の釉薬がかかっていない部分を見ると、素地の色が分かります。白ければ磁器、茶色や黒っぽければ陶器の可能性が高くなります。
高台裏の色を見る方法は、店頭でも説明しやすい実用的な見分け方です。ただし、特殊な土や釉薬、加工方法によって例外もあるため、あくまで判断の目安として考えるとよいでしょう。
なぜ高台裏には釉薬がかかっていないのか
陶磁器を作る際、多くの場合は器全体に釉薬をかけてから窯で焼成します。釉薬は焼成中に溶けてガラス質になりますが、器を棚板に置いた接地部分に釉薬が残っていると、焼き上がった時に器が棚板にくっついてしまいます。
そのため、棚板に接する高台裏の釉薬は、焼成前に拭き取ってから窯に積みます。完成した器の高台裏に釉薬がかかっていない部分があるのは、このためです。そして、その部分には素地そのものの色が見えるため、磁器と陶器を見分ける手がかりになります。
製品に釉薬をかけている様子。一般的には液体の釉薬に器を浸けて釉薬をかけます。
釉薬をかけた製品を窯の棚板に積んでいる様子。棚板との接地部分は、くっつきを防ぐため釉薬を拭き取ってあります。
有田焼と磁器の関係
有田は、日本磁器発祥の地として知られています。1616年頃、有田・泉山で磁器の原料となる陶石が発見され、日本で初めて本格的な磁器の生産が始まったとされています。
泉山の陶石は、長い年月をかけて掘り出され、有田焼の歴史を支えてきました。現在の泉山を見ると、一山を焼き物に変えてしまったのではないかと思うほど、地形が大きくくぼんでいます。
有田・泉山の陶石場。日本磁器発祥の地として、有田焼の歴史を語るうえで欠かせない場所です。
泉山の陶石。磁器の原料となる陶石が、有田焼の始まりを支えました。
有田焼の陶祖として知られる李参平の像と記念碑。いずれも有田町に設置されています。
現在の有田焼に使われる陶石
泉山は有田焼の歴史を語るうえで非常に重要な場所ですが、現代の有田焼の多くは、熊本県天草から取り寄せた陶石を原料として作られています。
天草の陶石採掘場では、山全体がそのまま使えるわけではなく、陶石として適した鉱脈を選びながら採掘が行われています。陶石は掘り出された後、粉砕・精製され、磁器の素地を作るための原料となります。
熊本県・天草の陶石採掘場の風景。
陶石の鉱脈を選びながら、ショベルカーなどで採掘していきます。
採掘場に積まれた天草陶石。現代の有田焼の多くを支える重要な原料です。
有田焼は磁器だけなのか
有田焼という言葉は、一般には有田で作られる陶磁器を指す言葉として使われます。有田は日本磁器発祥の地として発展し、現在も生産される製品の多くは磁器です。
一方で、現在では一部に陶器を制作する窯元もあり、有田焼の表現は時代とともに広がっています。そのため、有田焼を説明する際には、「有田は日本磁器発祥の地であり、有田焼の多くは磁器として作られている」と捉えると、実態に近い理解になります。
有田焼を知るうえで大切なのは、「磁器か陶器か」という分類だけではありません。白い磁器の美しさ、多彩な絵付け、土ものの温かみ、現代の窯元による新しい表現など、さまざまな器の魅力を知ることが、器選びをより楽しくしてくれます。
まとめ|磁器と陶器は、それぞれ異なる魅力を持つ焼き物
磁器と陶器は、原料や焼成温度、素地の色、吸水性、質感に違いがあります。磁器は白く硬く、薄く軽く作りやすく、多彩な絵付けを美しく表現できます。陶器は、土の温かみや素朴な風合いを楽しめる焼き物です。
どちらが優れているというものではなく、それぞれに異なる魅力があります。食卓では、磁器と陶器を組み合わせることで、料理や季節に合わせた豊かな表現を楽しむことができます。
有田は日本磁器発祥の地として知られ、現在も多くの有田焼が磁器として作られています。その歴史や素材の違いを知ることで、器を見る楽しみはさらに深まります。
有田焼やきもの市場の器
有田焼やきもの市場では、染付、赤絵、白磁、古伊万里様式、柿右衛門様式、鍋島様式など、さまざまな有田焼をご紹介しています。磁器ならではの白さや絵付けの美しさを、日常の食卓や贈り物にお楽しみください。
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